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美術鑑賞会~広島県立美術館「シャガール展」

集合写真


 子供の頃、時々屋根の上で過ごした。裏長屋の狭苦しい家の中にいるのが嫌になったりしたときだ。宮崎駿の「風立ちぬ」でも、少年時代の堀越二郎が屋根の上から飛行する夢のシーンがあった。少し空に近づいて視野が開けるので、地上の現実から逃避して心が開放され、見果てぬ夢が描ける場所なのかも知れない。
 ユダヤの人々は、夢見がちな人をからかうときに、「屋根から降りておいで」というそうである。シャガールの「バイオリン弾き」は、ローマ皇帝ネロがユダヤ人を大虐殺したとき、超然として屋根の上でバイオリンを弾く男がいたという故事を描いたものだ。シャガールもよく屋根の上で物思いにふけり、動物や恋人たちが空を飛ぶのを想像したのだろう。

 シャガールの絵を見ると、あるミュージカルを連想する。なぜだろうと思っていた。今回調べてみて理由が判った。帝政ロシアから迫害され、故郷を追われるユダヤ人一家の物語である。主人公は、「牛乳屋テヴィエ」という。いま紛争中のウクライナのシュテットルが舞台となっている。
 このミュージカルは、シャガールの絵をヒントに「屋根の上のバイオリン弾き」という題名にして、超ロングランを記録した。シュテットルとは、強制的に住まされるゲットーとは異なり、周囲から差別されながらも平和的に暮らす、ユダヤ人の共同体のことである。
 シャガールも、ウクライナの北にあるベラルーシの寒村、ヴィテフスクというシュテットルで生まれ、テヴィエのように故国を後に世界中を転々とした。様々な作品に描かれた情景は、ヴィテフスクへの郷愁とユダヤの伝統を墨守することで周囲から迫害された、暗く悲しい過去がないまぜになった心象風景に相違ない。
 2013年12月1日日曜日、シャガールの鮮烈な色彩と夢想の情景に心を動かされるひとときを過ごした。パリのオペラ座の天井画、教会のステンドグラスの下絵など、多くのモニュメント作品が集められていた。日本で言えば梅原龍三郎のようなタッチで、筆使いもあらいしデッサンも決して上手ではないが、心を掴んで離さない。「こんなシャガール見たことない!」というコピーに相応しい作品展であった。

参考
○“シャガール展 カタログ”(北海道新聞社2013)
○“人と映画のタペストリー”
(http://www.strawberryplanet.net/blog/blog/2013/01/11/fiddler-on-the-roof/)
(広島オリーブ会副会長 20回生 後藤 昇)
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