校長就任のご挨拶
「生徒の命」と「学習の機会」の間で
これまで広島オリーブ会の会員として活動をともにしていただいた清水欽也さん(32回生)が、このたび母校の校長に就任されました。卒業生が附属の校長になるのは初めてのことだそうです。就任後、広島オリーブ会にメッセージをいただきましたので、ご紹介します。
このたび、母校の校長を拝命いたしました32回生の清水欽也です。12月の幹事会では、立候補したことを表明いたしましたが、私自身「教育学研究科」ではないこと、あるいはオリーブ会会員であるがゆえに、「近すぎる」と判断されて学長面接では落とされるのではないかと危惧していました。
幸い無事校長に就任することができ、すでに就任より二週間がたとうとしています。この間、いきなり校長としての決断が迫られる事態が生じてしまいました。皆様もご存じの通り、「武漢で発生したコロナウイルス」騒動です。就任後の校園長会議で、各附属の対応について意見交換が早速あったのですが、ほかの附属学校園はおおむね「自粛」傾向。中には学長や理事に、校長一同で昨年度末より継続している休校の延長を進言しようという声まで一部にはありました。
このような中、私自身の悩みは「休校にするのは簡単だけれども、生徒や教職員はどうなるのか」ということでした。春は入学式、体育祭、オリーブ祭など行事が目白押し。また、休校にして、年間指導計画がこなせるのかなど、「休校」にしておけば、「生徒の命を守る」という大義名分のもと一応の責任は果たせます。しかし、聞くところによると、体育祭実行委員はこの流れの中でも「いかにしたら体育祭が実行できるのか」「どのような競技が実行可能で、どのような競技が不可能なのか」について教員と一緒になって考えているではありませんか。おそらく6年生にとっては最後の体育祭、中には1年生の時から応援団にずっと憧れて、やっと夢が実現しそうだと胸膨らませていた生徒たちもいるかもしれません。
休校にし、体育祭中止にすることによって損なった教育的価値は、はたから見るより大きいと思います。それは体育祭中止に対する「失望感」だけではなく、生徒自身が逆境や制約の中で思いの実現を目指して考える力やその機会の喪失になります。また、教師たちが行っている普段の授業は「不要不急」ということになります。これらの損失を考えた上でも「休校による感染回避」は必要だったのかという疑念は今も私の胸に残っています。
その時点で東京並みに感染が広まっていれば、リスクの方が高いので「命を守る」ために休校という判断は理解できます。しかし、その時点でおそらく両手に足りないくらいの感染者数、非常にリスクが小さい中で果たして、生徒たちの思いや教師の授業をつぶしてまで休校することが妥当なのか否か。一応、文部科学省から出されているガイドラインには、学校内で感染者が出た場合、地域の保健所と相談の上、休校するか否かを決めるよう示されています。その時点では福山地域からは2、3名しか感染者は出ておらず、いずれも他地域で感染した人たちでした。ということは、感染者を出すことのリスクは非常に低かったと考えていましたが、結局は広島県や地域の他の学校の動向も踏まえ、不本意ながら休校という措置をとった次第です。
この騒動の中で強く感じたのは、学校長は責任のある立場であるとはいえ、やはり医療に関しては素人だということです。私がリスクを甘く見ていたのかもしれませんし、あるいは他の校園長先生方がリスクを大きくとりすぎていたのかもしれません。本広島オリーブ会には、医療関係者も多く、中には県の対策委員会のメンバーの方もいらっしゃいますが、やはり私の武漢ウイルス感染に対する認識は甘かったのでしょうか。
また、広島オリーブ会でこのようなことについてもいろんなご意見が聞けたら嬉しいです。武漢ウイルス騒動が収束し、広島オリーブ会の諸活動が再開されることを切に望んでいます。今後ともどうかよろしくお願いいたします。
(32回生 清水欽也)