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山中高女生徒の残した記録を母校へ 〜被爆の歴史を伝える〜


 2020年、地元紙の中国新聞が「被爆75年ヒロシマの空白」という連載をスタート。その第1回目には梶山ハルという女性を取り上げた。原爆供養塔の遺骨を遺族へ返還しようという広島市の取り組みの中で、中国新聞の山本祐司記者が、納骨名簿と国立追悼平和祈念館の情報とを照合し、納骨名簿の「鍛治山はる」が祈念館の「梶山ハル」と同一人物であることを突き止めた。
 さらに、ハルさんの孫で山中高女の2年生だった梶山初枝さんも被爆死したこと、初枝さんの遺品などは初枝さんの弟が大切に保管しておられることも判明。山本記者は母校の前身、山中高等女学校の同窓会「橘香会」が当会に承継されていると聞き、当会事務局に連絡。以前より山中高女と縁が深かった野坂顧問(元会長)が中心となってお話を伺った。
 梶山初枝さんの弟の武人さんは施設に入っておられ、COVID-19騒動で面会が困難となったため、私たちは武人さんの子(初枝さんの甥)の修治さんから写真・手紙などの遺品や名簿・図書の扱いについて相談を受けた。
 遺品を見せていただいたが、最も感動的だったのは初枝さんが家族に宛てた手紙だ。初枝さんの家族は当時満州に渡ったのだが、初枝さんはせっかく希望する山中高女に入れたのだから通わせてやりたいと、ハルさんと二人で広島に残ったのだそうだ。戦局が厳しいなか、広島で精一杯頑張っているということを便箋2枚に綴っているが、とても13歳の少女と思えないようなけなげな文面に驚かされた。
 その他にクラス写真、胸章、被爆者や学徒動員に関する名簿や図書類も。修治さんは、これらを戦争の歴史を伝えるものとして、後世のために公開・展示してもらいたいとの意向で、「広島オリーブ会はそのような平和活動を行う組織なのか」と問われた。そこで、母校は平和教育に力を入れており、毎年生徒が福山から被爆慰霊祭に参列している旨を説明。併せて母校の図書館で保管し、平和教育に活用させてもらえないかと母校に相談した。答えは、当校(福山)で預かるのが適当であるとのことだった。
 修治さんとは昨年8月6日の雑魚場町での慰霊祭以来、何回かお会いした。お話によれば、写真や手紙の現物を確認しようと箱から出すたびに劣化が進むことに驚かれ、経年劣化の防止策に悩んでおられた。その後、原爆資料館にも交渉され、遺品など一部については受け入れてもらえることになったそうだ。そして最終的には、母校が希望されるならば遺品は複製(画像データやコピー)、名簿・書籍類は原本を提供したいと希望された。
 これを受け、当会内部でも母校が受け入れてくれるならこの動きを支援すべきとの声が高まった。会員から寄付を募ろうという声、さらには野坂顧問や佐藤会長(当時)からは私財を出して展示ケースを寄付したいという発言も聞かれた。また、この史料をどのように活用するか当会から母校に対して提案を行うべきだとの意見もあった。
 20年度の活動は、COVID-19による移動自粛や修治さんのお仕事の都合もあってここまで。その後、2021年4月26日に野坂顧問、上野が母校を訪問。修治さんからお預かりした資料を渡すとともに、「資料の寄託に関する覚書(案)」を提示、母校で検討していただくよう要請した。
 現在、修治さんの他にも、山中高女の関係者から当会や母校に対し、史料提供の相談が何件かあるという。それらに対応すべく、母校では視聴覚設備の充実を企画。今後の平和活動展開が期待できる。
※山中高等女学校の歴史や当会と「橘香会」の関係等については、会報第21号(2015年5月発行)に詳しく記載。


(22回生 上野秀昭)
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